五淋散 ( ごりんさん )膀胱炎

「五淋散(ごりんさん)」は、膀胱炎や尿道炎など、泌尿器系のつらい症状によく用いられる漢方薬です。その名前の由来は、漢方でいう「五淋(石淋・気淋・膏淋・労淋・熱淋)」という5種類の尿路の病態(頻尿、排尿痛、排尿の切迫感など)を改善することからきています。
五淋散 ( ごりんさん )膀胱炎
五淋散の主な効果と特徴
五淋散は、主に以下の症状に効果を発揮します。
- 排尿痛: 尿を出す際の痛みや不快感を和らげます。
- 残尿感: 排尿後も尿が残っているような不快な感覚を改善します。
- 頻尿: 尿の回数が多い症状を抑えます。
- 尿のにごり: 尿が白っぽく濁る症状にも対応します。
これらの症状は、膀胱や尿道の炎症が原因で起こることが多いため、五淋散は炎症を鎮め、痛みを和らげ、尿の通りをスムーズにすることで、不快な排尿症状を改善へと導きます。
五淋散の作用機序
五淋散は、11種類の生薬が組み合わさってその効果を発揮します。主な作用は以下の通りです。
- 消炎・抗菌作用: 「黄芩(おうごん)」や「山梔子(サンシシ)」などが、膀胱や尿道の炎症を抑える働きをします。
- 利尿作用: 「茯苓(ぶくりょう)」「沢瀉(たくしゃ)」「車前子(しゃぜんし)」「木通(もくつう)」「滑石(かっせき)」といった生薬が、体内の余分な水分を排出し、尿量を増やすことで、膀胱内の細菌や老廃物を洗い流し、炎症の原因を取り除く手助けをします。
- 鎮痛・鎮痙作用: 「芍薬(しゃくやく)」「甘草(かんぞう)」「当帰(とうき)」などが、排尿時の痛みや膀胱のけいれんを和らげます。
- その他: 「地黄(じおう)」は、清熱(熱を冷ます)や補血(血を補う)の働きも持ち、炎症による熱感を鎮めたり、体力をサポートする役割も果たします。
これらの生薬がバランス良く作用することで、炎症の改善、痛みの緩和、排尿の正常化を促します。
こんな方におすすめ
- 排尿時の痛みが比較的強い方
- 頻尿や残尿感が続く方
- 尿のにごりが気になる方
- 体力は中等度〜やや低下した方
比較的幅広いタイプの膀胱炎症状に用いられ、急性期から慢性期の繰り返す症状にも対応できることがあります。
服用上の注意
- 自己判断での服用は慎重に: 漢方薬は体質や症状によって適切なものが異なります。自己判断で服用する前に、できれば医師や薬剤師、登録販売者などの専門家に相談し、自身の状態に合ったものを選びましょう。
- 西洋薬との併用: 他の薬を服用している場合は、飲み合わせに注意が必要な場合があるので、必ず医師や薬剤師に相談してください。
- 副作用: まれに、食欲不振、胃部不快感、下痢などの消化器症状のほか、間質性肺炎や偽アルドステロン症などの重篤な副作用が報告されています。体調に異変を感じたら、すぐに服用を中止し、医療機関を受診してください。
- 急性症状が強い場合: 高熱や血尿がひどい、腰や背中の痛みがあるなど、膀胱炎の症状が重い、または悪化している場合は、早めに医療機関(泌尿器科など)を受診し、適切な診断と治療を受けることが最も重要です。漢方薬は、あくまで症状の緩和や体質改善の補助として検討してください。
五淋散は、排尿トラブルに悩む多くの人々に利用されている漢方薬ですが、ご自身の症状や体質を理解し、適切に活用することが大切です。
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