皮膚掻痒症(ひふそうようしょう) 漢方薬 で治す方法

皮膚掻痒症(ひふそうようしょう) 漢方薬で治す方法を紹介します。皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)は、皮膚に発疹などの目立った異常が見られないのに、強いかゆみがあらわれるのが特徴の皮膚の病気です。かゆみがとても強いために爪でひっかいたりすると、そこが炎症を起こして、二次的に湿疹ができることがあります。
皮膚掻痒症(ひふそうようしょう) 漢方薬で治す方法
大きく分けると、体のどこにでもあらわれる全身性の皮膚掻痒症と、外陰部や肛門部周辺、頭部など体の一部分にあらわれる限局性の皮膚掻痒症の2つがあります。
全身に起こる皮膚掻痒症では、皮脂が欠乏するために起こる肌の乾燥が最も多い原因と考えられます。特に空気が乾燥する冬の季節などは、入浴時の肌の洗い過ぎに注意しましょう。クリームなどを使用して保湿することが大切です。
高齢者の体のかゆみの多くは、年齢的な皮膚の衰えによって、皮膚が乾燥して皮脂が足りなくなるためだと考えられます(老人性乾皮症)。カサカサに肌が乾き、かくと粉が出たりして、かゆみがひどいためにかき壊してしまうことも少なくありません。
しかし、ただの乾燥肌と思い込んでしまうのは危険なこともあり、糖尿病や肝臓障害などの基礎疾患や薬剤を服用することの影響などが潜んでいる可能性がありますから、皮膚科を受診するのがいちばん良いでしょう。
ほかに、ストレスや精神的な不安などからも皮膚がかゆくなったりします。この場合、ストレスが解消されると軽減したり、治ることもあります。
限局性皮膚掻痒症では、かゆみは、女性の場合、外陰部に起きることが多く、男性の場合だと肛門周囲に起きることが多いです。女性に多い外陰部掻痒症の原因は、乾燥や、外部刺激による皮膚過敏、膣炎や感染症などが考えられます。また、男性に多い肛門掻痒症の原因は、排尿障害や便秘、下痢、痔、脱肛、前立腺肥大といった病気から引き起こされることが多いと考えられます。いずれにしても、清潔にしておくことが大切です。
皮膚掻痒症 漢方薬で症状を改善する
皮膚にかゆみが起こる原因はさまざまで、医師の診察を受けても原因がはっきりしないものもあります。漢方では、かゆみをしずめることのほか、長期に渡り飲み続けることで、皮膚が乾燥しにくいような体質への改善をめざします。
各漢方薬の解説と皮膚掻痒症への適用
1. 当帰飲子(とうきいんし)
- 効能・効果: 体力中等度以下で、冷え症で、皮膚が乾燥するものの湿疹・皮膚炎(分泌物の少ないもの)、かゆみに効果があります。特に、乾燥肌や高齢者の皮膚掻痒症に用いられることが多いです。夜間の掻痒が激しい場合にも有効とされます。
- 漢方的な考え方: 「血」が不足して皮膚が乾燥し、かゆみが生じる「血虚生風(けっきょせいふう)」の状態に用いられます。肌に栄養とうるおいを与え、乾燥を改善します。
- 特徴: 「四物湯(しもつとう)」という「血」を補う基本的な処方を含んでおり、乾燥によるかゆみに適しています。
2. 黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
- 効能・効果: 比較的体力があり、のぼせぎみで顔色が赤く、いらいらして落ち着かない傾向のある方の湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみなどに用いられます。不眠や胃炎、二日酔などにも使われることがあります。
- 漢方的な考え方: 体内にこもった熱(「実熱(じつねつ)」)が原因で生じる、炎症やかゆみを鎮める働きがあります。
- 特徴: 炎症が強く、赤みや熱感を伴うかゆみに適しています。
3. 桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)
- 効能・効果: 体力が衰えているものの、寝汗、あせも、湿疹・皮膚炎に用いられます。特に、虚弱体質で多汗症や寝汗がある方に適しており、皮膚のしまりが悪く、湿性皮膚病になりやすい場合にも応用されます。
- 漢方的な考え方: 体表の「気」が不足している「表虚(ひょうきょ)」の状態を改善し、皮膚のバリア機能を高め、余分な水気を排出することで、かゆみや湿疹を改善します。「黄耆(おうぎ)」には、滋養強壮作用や水分代謝を調節する作用があり、皮膚の潤いを保ち、過剰な発汗を抑える効果が期待されます。
- 特徴: 体力や気力が衰えている方で、発汗と関連する皮膚症状がある場合に用いられます。
これらの漢方薬を用いた皮膚掻痒症の治療方法
これらの漢方薬を皮膚掻痒症の治療に用いる場合、患者さんの体質や症状に合わせて選択されます。
- 当帰飲子: 主に皮膚の乾燥がひどく、カサカサしたかゆみが特徴の場合に選択されます。冷え症傾向のある方や、高齢者の皮膚掻痒症によく用いられます。
- 黄連解毒湯: 皮膚に赤みや熱感を伴う強いかゆみがあり、イライラしやすいなど、体内に熱がこもっている場合に選択されます。
- 桂枝加黄耆湯: 比較的虚弱で、寝汗をかきやすく、皮膚が湿潤しやすい傾向があり、それが原因でかゆみや湿疹が生じる場合に選択されます。
重要な注意点:
- 自己判断での服用は避けましょう。漢方薬は個人の体質や症状によって効果が異なり、合わない場合は副作用が生じる可能性もあります。必ず漢方に詳しい医師や薬剤師に相談し、適切な診断と処方を受けることが重要です。
- 副作用について:
- 当帰飲子: 胃腸の不調(胃もたれ、吐き気、下痢など)、まれに偽アルドステロン症(むくみ、血圧上昇、手足のしびれなど)、ミオパチー(筋力低下、手足のしびれなど)が起こることがあります。
- 黄連解毒湯: 発疹、蕁麻疹、食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢などが報告されています。まれに間質性肺炎、肝機能障害、腸間膜静脈硬化症といった重篤な副作用も起こり得ます。
- 桂枝加黄耆湯: 発疹、発赤、かゆみなどの過敏症、まれに偽アルドステロン症やミオパチーが起こることがあります。
- 他の薬との併用: 他の漢方薬や西洋薬を服用している場合は、相互作用の可能性もあるため、必ず医師や薬剤師に伝えてください。特に、甘草を含む漢方薬を複数併用する際には、偽アルドステロン症に注意が必要です。
皮膚掻痒症は、単に皮膚の表面的な問題だけでなく、全身のバランスの乱れから来ることがあります。漢方治療は体質改善を目指すものであり、根気強く続けることが大切です。
- 当帰飲子(とうきいんし)血流を改善し、症状を緩和する薬です。皮膚がカサカサした状態の皮膚掻痒症に効果的です。普段から冷え性、貧血気味で、顔色が悪いような人に向いています。
- 黄連解毒湯 ( おうれんげどくとう ) 体力が普通にあって、のぼせぎみで顔色が赤く、イライラしやすくて落ち着かない傾向のある人の皮膚掻痒症、湿疹・皮膚炎に用います。
- 桂枝加黄耆湯 ( けいしかおうぎとう ) のぼせや熱、発汗のある人で、食欲不振や慢性胃腸病がある人の皮膚掻痒症に向いています。