白衣性高血圧 病院に行くと血圧が上がってしまう
白衣性高血圧」は、病院などの医療機関で血圧を測定すると高くなるものの、自宅などリラックスした環境で測定すると正常値を示す状態を指します。医療従事者の白衣や診察室の雰囲気に緊張することで、一時的に血圧が上昇するのが特徴です。
自宅で測定するといいのに病院で測定すると上がってしまう
ある特定の場所で測ったときだけ、血圧が高くなる場合があります。それが「白衣性高血圧」と「仮面高血圧」です。
ドクターやナースの前だと血圧が上がってしまう
家庭用測定器などをを使用して自宅け計測したり、ほかの場所で血圧を測ると正常範囲なのに、病院など医師や看護師の前では緊張して血圧が高くなってしまう人がいます。これを「白衣性高血圧」と言います。他の環境で何度か測定した場合に血圧が正常であるのなら、多くの場合、治療をしなくても心配はありません。しかし、医療機関で測るといつも血圧が高いときは、白衣性高血圧である可能性もあります。そのため、家庭用血圧計の使用による血圧測定が勧められています。
家庭で測ったときだけ血圧が高くなる「仮面高血圧」
白衣性高血圧とは逆に、医療機関などで血圧を測ると正常なのに、家庭用血圧計で測ると高血圧になる人がいます。これを「仮面をかぶったように隠れている高血圧」という意味で、「仮面高血圧」と言います。
仮面高血圧にはさまざまなタイプがありますが、多く見られるのは早朝に血圧が上がるタイプです。また、早朝に血圧が上がる場合でも、起きてから血圧が急上昇するタイプと、就寝中から起床まで血圧が高い状態が続くタイプがあります。特に怖いのは、夜間も高血圧が持続する後者です。通常なら低くなるべき時間帯も血圧が上がったままなので、血管や心臓への負担が大きくなります。そのため、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす危険性が大変高くなります。
仮面高血圧は、喫煙者やストレスの多い人によく見られます。喫煙すると血圧は上がりますが、医療機関では喫煙できないために普段よりも低めの血圧になることがあるのです。
また、仕事などでストレスの多い人は、診察の待ち時間にリラツクスすることで血圧が下がるのです。さらに仮面高血圧は、すでに高血圧で治療中の人にも見られます。診察時には正常範囲なので治療がうまくいっていると思われがちですが、実は家庭では早朝高血圧になっていることが見逃されてしまうのです。それを放置しておくと、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高くなってしまいます。
仮面高血圧を見つけるためにも、家庭用血圧計で朝の血圧を測定することが大変重要です。仮面高血圧が疑われるときは、24時間血圧を計測できる携帯型の血圧計を使用することが勧められます。
白衣性高血圧の定義と血圧の目安
日本高血圧学会の診断基準では、以下のように定められています。
- 診察室血圧:収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上の場合です。
- 家庭血圧:収縮期血圧が135mmHg未満、または拡張期血圧が85mmHg未満の場合です。
つまり、病院で測ると「高血圧」の基準値を超えてしまうものの、自宅で測ると「正常」の範囲内に収まる場合は、白衣性高血圧と診断されます。
白衣性高血圧の症状
白衣性高血圧は、基本的に自覚症状がほとんどありません。高血圧でよく見られる頭痛やめまい、動悸、息切れといった症状が常に出るわけではありません。症状が現れるとすれば、血圧測定時の緊張によって一時的に心拍数が増えたり、めまいやふらつきを感じたりする程度です。
白衣性高血圧と通常の高血圧の違い
- 白衣性高血圧:診察室でのみ血圧が高くなり、自宅では正常な血圧が保たれている状態です。
- 持続性高血圧(通常の高血圧):診察室でも自宅でも、常に血圧が高い状態です。
白衣性高血圧が注目される理由と注意点
以前は、白衣性高血圧は「緊張しているだけだから問題ない」と考えられていました。しかし、最近の研究では、白衣性高血圧の人も、正常血圧の人に比べて将来的に脳心血管病(脳卒中や心筋梗塞など)のリスクがやや高いことがわかってきました。
そのため、白衣性高血圧と診断された場合でも、以下の点に注意し、適切な管理を行うことが推奨されています。
家庭血圧測定の重要性: 白衣性高血圧を正確に診断し、その後の経過を観察するためには、自宅で定期的に血圧を測定することが非常に重要です。
測定のタイミング: 朝(起床後1時間以内、排尿後、朝食・服薬前)と夜(就寝前、入浴・飲酒後)に測定するのが一般的です。
正しい測り方: 椅子に座り、リラックスした状態で、上腕にカフを正しく巻き、心臓の高さに合わせて測定します。
記録: 測定した血圧値は、血圧手帳などに毎日記録し、診察時に医師に見せるようにしましょう。
定期的な医療機関受診: 白衣性高血圧の人は、将来的に持続性高血圧に移行する可能性があるため、定期的に医療機関を受診し、医師の指示に従って経過を観察することが大切です。
生活習慣の改善: 喫煙、過度の飲酒、塩分の摂りすぎ、運動不足、肥満、ストレスなどは、高血圧のリスクを高めます。白衣性高血圧の場合でも、これらの生活習慣を見直すことで、将来的な高血圧の発症リスクを低減できる可能性があります。
白衣性高血圧は、自覚症状が少ないために見過ごされがちですが、放置せずに適切な対応をとることが、将来の健康を守る上で重要です。