安易に使えない胃腸薬

便秘と同じく胃腸の調子がよくなくて胃腸薬を常用している人も多くいます。

たかが胃腸薬と気軽に常用している

慢性便秘と同じく、胃腸の調子がおもわしくなくて胃腸薬を常用している方も意外に多いものです。たかが胃腸薬と、高をくくっていたことが私にもあったのですが、ある方の症例がきっかけで、考えを根本的に変えることにしました。

その症例というのは、は老人ホームに住む78歳の性格の穏やかなおじいさんです。その方がが開業医で急性胃炎と診断され、早速シメチジン(タガメット)の服用をはじめました。すると翌日から急激に認知が増悪し、せん妄が出現してきたのです。私がその老人ホームをたまたま訪ねたときが、その方の症状が急激に悪化していた時期でした。明らかな原因もなく急激に認知症が進行したり、せん妄をきたしたりすることはあまりありません。ひょっとしたら昨日服用し始めたシメチジンが犯人ではないかと考え、とりあえずシメチジンを休薬しました。

案の定、翌日にはせん妄は消失し、事なきを得ました。たとえ胃腸薬とはいえ、侮ってはいけないと思いを新たにするきっかけになったエピソードです。

従来、消化性の潰瘍の原因として、胃酸の増多、ピロリ菌が挙げられていますが、そもそも、胃酸はむしろリラックスすることによって分泌が促されること、しかも胃酸は異物を解毒するには大切なものであること、またピロリ菌を保有する人は多いにもかかわらず、胃潰瘍になる人はごくわずかであることを考えてみれば、真犯人は別にいると考えるのがごく自然な発想です。

したがって、制酸剤やH 2 ブロッカーなどを処方することは理にかなっていないことになりますし、今回のことを考えてみても、安易に胃腸薬を処方することは慎まなくてはいけないと思うようになったのです。

ごく最近では、交感神経の過緊張によって炎症が喚起され、顆粒球からあいま活性酸素が放出され、それがピロリ菌と相俟って粘膜のびらんや潰瘍を引き起こすという説が有力になりつつあるようですが、なるほど合点のいく話だと思います。

ちなみに胃潰瘍、十二指腸潰瘍の人の血液像を診てみますと、顆粒球がリンパ球に比べて優位に傾いているケースが目立ちます。

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